委員会設置会社とは?
委員会設置会社とは,米国の実務に倣って平成14年改正商法より導入された制度で,指名委員会,監査委員会,報酬委員会を置く株式会社を云います(会社法2条12号)。
指名委員会は,株主総会に提出する取締役(及び会計参与)の選任・解任に関する議案の内容を決定する権限を有します(404条1項)。監査委員会は,執行役等の職務の執行の監査を行なう権限を有します(404条2項)。報酬委員会は,執行役等の個人別の報酬等の内容を決定する権限を有します(404条3項)。
最大の特徴は執行と監督,すなわち執行役による業務執行と取締役会による執行役の業務執行に対する監督を分離した,という点にあります。
委員会設置会社の導入事例はあまり多くなく,平成24年9月時点でわずか89社で,委員会設置会社から再び監査役設置会社に移行した会社も少なくなりません。最も有名な委員会設置会社はソニーでしょうか。その他にも東芝,日立グループ各社,野村グループ各社,イオンなどが導入しています*1。
*1
委員会設置会社に関する詳細は日本監査役協会の提供するリストに掲載されているので参照されたい。因みに特例有限会社を含む株式会社数がおよそ150万社,上場会社がおよそ3,700社と云われている。
委員会設置会社における取締役
通常の取締役会設置会社とは異なり,法令に別段の定めがある場合を除いて取締役は業務執行をすることができず(415条),また,取締役会から執行役に対する業務執行の決定権限の大幅な委任を認めています(416条4項)。これにより迅速な意思決定が可能となります。
各委員会の委員は,取締役の中から取締役会の決議によって選定されます(400条2項)。そして各委員会は3名以上の委員(つまり取締役)で構成され,かつその過半数は社外取締役でなければなりません(400条1項3項)。なお,社外取締役を含む取締役は複数の委員を兼ねることもできるので,最低2名の社外取締役を置けば委員会設置会社となることができます*2。
*2
もっとも,理論的には取締役が3名しかいないような非公開中小会社が委員会設置会社となることもできるが,委員会設置会社には会計監査人の設置も義務付けられているし(327条5項),そのような会社がこの制度を導入したところでほとんど実益はないだろう。
なお,取締役は執行役を監督する立場にあるので(416条1項2号),執行役の指揮命令を受ける支配人その他の使用人*3を兼任することはできません。
*3
使用人とは一般的な言葉で云えば「社員(従業員)」のことである。なお,会社法に於いて「社員」は株主を意味するので注意されたい。また,支配人とは,会社に代わってその事業に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有する使用人のことで(11条1項),本店又は支店に置くことができる。一般的には支店長や営業所長などがこれに該当するが,その者が支配人であるかどうかはその名称(肩書き)ではなく,会社からその事業に関する支配権を付与されているか否かという実質によって決定される(多数説)。
執行役
執行役は,取締役会から委任を受けた業務執行の決定をし,業務執行を行なう(418条),委員会設置会社の必要的機関です(402条1項)。
会社の業務執行について基本的な経営戦略の決定権限のみを取締役会に残し,執行役への委任を広範に認め,執行役に業務執行権限を与えることで,意思決定の迅速化を図ることができます。また,業務執行と監督を分離し,取締役会の監督機能を強化することで,こうした業務執行の効率化を裏から支えることができます。
執行役の員数に上限はなく(402条1項),執行役が複数いる場合は,取締役会で職務の分掌及び指揮命令の関係など執行役相互の関係に関する事項が決定されます(416条1項1号ハ)。
執行役の任期は1年(選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の集結後最初に招集される取締役会の終結の時まで)で(402条7項本文),定款で短縮が可能です(同条項ただし書)。前述の通り,執行役には業務執行の決定について広範な委任を認めていることから,執行役としての適否について一定の短い期間で取締役会の信任を問う必要があるためこのような規定となっています。
執行役は取締役会によって選任され(402条2項),また,取締役会はいつでもその決議によって執行役を解任できます(403条1項)。なお,執行役の氏名は絶対的登記事項です(911条3項22号ロ)。
執行役は会社の代表権を有しておらず,代表権を有するのは代表執行役です*4。したがって,取締役会は,執行役の中から代表取締役を選定しなければなりません(420条1項前段)。執行役が1人しかいない場合は,その者が代表執行役に選定されたものとします(同条項後段)。
*4
一般的な株式会社に於ける「代表取締役」のようなものだと思えばよい。委員会設置会社では代表取締役を置くことはできない。なお,取締役が執行役を兼任することはできる。
オススメ書籍
『株式会社法』江頭憲治郎(有斐閣)
『法律学講座双書 会社法』神田秀樹(弘文堂)
『リーガルクエスト 会社法』伊藤靖史, 大杉謙一, 田中亘, 松井秀征(有斐閣)